血液製剤は、出産や事故等で大量出血に見舞われた際、迅速な輸送と使用が必要となりますが、輸送網に課題を抱える国・地域では、必要に応じた配送が困難です。そのため、主に、多くの量を一度にまとめて医療機関に運び、在庫とする形態がとられますが、血液製剤の消費期限は短く、使い切れなかった製剤は廃棄せざるを得ないという課題があります。また、医療機関によっては、血液を保管する設備を買うための十分なお金がなく、治療の選択肢が限られるという課題があります。
Zipline International Inc.は、2016年からルワンダにて、航続距離約160km、巡航速度100km/hの自動飛行固定翼型ドローンを活用し、血液製剤・医療用医薬品の配送事業を開始しました。血液製剤・医薬品の在庫は配送拠点に集中保管されており、Ziplineはその拠点を中心に、配送圏内にある医療機関に対し、必要な資材を、必要なときに必要な量だけをドローンで迅速に配送を行っています。
固定翼型ドローンは雨風に強く、14m/sの風や、50mm/hの非常に激しい雨の中でも安定的な配送ができる能力を持ちます。配送中に保冷が必要な品目にも対応が可能であり、自動飛行による24時間365日の運航にて、多い日には1日200回程度の配送を行っています。2023年現在、ルワンダでは2つの拠点で国土のほぼ全域を配送圏内に収めており、首都キガリ周辺を除く全国の血液流通量のうち約75%は、このドローンによって配送がなされています。
Ziplineは、2019年にガーナ、2022年にナイジェリア、コートジボワール、ケニアへとアフリカでの拠点を拡大しており、各地域で血液製剤・医療用医薬品・検体・日用品などの配送事業を行っています。
豊田通商は、Ziplineと2021年に日本市場における戦略的業務提携を締結し、2022年4月より、長崎県五島列島で100%子会社のそらいいな株式会社による医療用医薬品および食品・日用品の配送事業を開始しました。離島地域特有の物流課題を抱える地域で、2023年10月末時点で、1,100回超、91,000km超の飛行実績を積んでいます。
日本全国に視点を向けると、物流配送網は一定の整備がなされていますが、少子高齢化の進展等により、配送担い手の不足などの社会課題に直面しています。そのようななかZiplineでは、既存の長距離配送用ドローンに加え、都市内でのラストワンマイル配送を念頭にした新たな機体の開発を行っています。そらいいな社は、Ziplineの既存・新型の2種類の機体と、配送実績を基にしたドローン物流事業の展開を通じ、国内の物流諸課題へ対応していきたいと考えています。
アフリカ各国と日本は、社会の環境や人口・年齢の構成など多くの点で異なる状況にありますが、配送網の未整備や物流の担い手不足に起因する諸課題に対し、Ziplineのドローン物流が目指す「誰一人として取り残さない」という理念は、共通して当てはまる点であると考えております。Ziplineおよびそらいいなでは、このアフリカで磨き上げられたドローン技術によるリバースイノベーションを通じ、便利で持続可能な配送サービスの実装を進めて参ります。