スナノミ症とは、一般的にTunga penetrans, Jigger, Sand Flea または Chigoeとして知られるノミのメスが真皮に穿入して症状を呈する寄生虫性皮膚疾患で、WHOも「顧みられない熱帯病(NTDs)」の「その他の寄生虫症」に含まれるという見解を示しています。
スナノミがヒトに穿入する際は無痛ですが、その1〜3日後には皮膚の掻痒・発赤あるいは疼痛を起こします。侵入部位で吸血により栄養を取り、腹部の卵が成長すると5㎜以上に膨大するため、患部の疼痛は増悪し、激しいかゆみ、歩行困難、睡眠困難へつながります。また、熱帯地方では同部がしばしば細菌感染の侵入部位となって、時に広範となる蜂巣炎、ガス壊疽、破傷風などの二次感染を生じます。
スナノミの原産地はアメリカ大陸と西インド諸島ですが、現在では中南米のみならず、アフリカ、インドへも広がっています。WHOによれば既に88カ国での感染が確認され、ラテンアメリカ、アフリカ、南アジアのBOP層の50%に広がっており、中南米では2,000万人がリスク下に、ケニアでは200万人が罹患していると言われています。そのためケニアでは、2015年よりNational Jigger Dayを制定し、予防・治療ガイドラインを作成するなどの対策に乗り出しています。
既にケニアにおいては、NPO法人日本リザルツによる予防支援活動や、長崎大学のケニア研究拠点による実態把握、予防啓発、治療に関する人材、ボランティア育成が進められています。一方で、ガイドラインで推奨される治療方法では治癒率が40%程度にとどまるという課題がありました。
そこで、サラヤではより有効な駆虫成分と、これまでのスキンケア技術を駆使した“スナノミ・ローション”の開発を進めています。本製品は、既にケニア薬局毒物委員会による医療機器としての承認を得ており、保健省公衆衛生局へのサンプル提供が始まっています。また、並行してサラヤのウガンダ拠点・カキラ工場における現地製造の準備を進めています。
サラヤは、今後さらに現地保健省や国際機関、アカデミアや、国際NPO等、あらゆるステーク・ホルダーとの連携を深め、2024年中にはスナノミローションのウガンダでの量産を開始し、その後3年以内には少なくともアフリカの全蔓延地域への普及を目指しています。
2007年よりスナノミ症との戦いを続けるケニアのNGO団体 Ahadi Kenya Trustによれば、これまでに登録してきた680万人の患者の中で、完治し社会復帰できたのはわずか20万人とされています。これは就学、就職の困難による経済的貧困や幹部の変形による社会的偏見が大きな原因となっています。このため2023年3月3日の保健省主催ケニア・スナノミの日のイベントでは、会場となった学校へ通う子供たちを含む300名以上の患者が参加し、感染した生徒たちを学校から排除するのではなく、地域の公衆衛生担当官を通じて治療が受けられるように求められました。これに加え、より効果の高い治療方法が確立され、症状が悪化する前に治癒できるようになれば、偏見も含めた負の連鎖を断ち切ることができますが、他の顧みられない熱帯病と同様に、それに取り組む企業は限られています。そこで、サラヤは現地に拠点をもち、深く長いコミットメントを目指す企業として、「誰もやらないなら我々がやる」という精神で、スナノミ症対策に取り組んでいます。