ACTIONS

手指衛生をすべての医療施設のスタンダードに。
Made in Africaのアルコール手指消毒剤と医療関連感染の対策人材育成

サラヤ株式会社
_Uganda
ウガンダ
Kenya
ケニア
2023.11.17
KV_saraya

ISSUE背景と課題

WHOでは2000年代に医療関連感染症を大きな問題と捉え、国際的に取り組むべき議題として様々な対策を進めてきました。それにもかかわらず、その負のインパクトは現在も大きく、コロナ・パンデミックの2020年第1波の中では新規患者の41%が医療関連感染であったという報告もあります。

これらの医療関連感染については、手指衛生とそれに続く費用対効果の高い感染予防管理対策促進により、70%削減できるとされています。しかし、物的・人的リソースが乏しく、感染予防管理対策が充分でない途上国においては、その感染リスクは先進国の2〜20倍程度高いとされており、国家レベルでのコミットメントや人材育成、モニタリングシステムの確立が求められています。

Five main reason for investing in IPC
Source: WHO : Global report on infection prevention and control

INNOVATION課題解決

サラヤは、WHOが展開している世界的医療関連感染症対策キャンペーン“Clean Care is Safer Care”に呼応する形でウガンダに現地法人を設立。同国でのキャンペーン推進に寄与すべく、JICAや保健省との協力で実証事業を行い、2013年にはその成果として「ウガンダの医療機関に適切な教育啓発を提供することで、アルコール消毒剤による手指衛生が充分受け入れられること」および「アルコール消毒剤による手指衛生の遵守率の向上と医療関連感染症の発生に負の相関がある事」をウガンダ初の国際感染症会議で発表しました。

東アフリカ感染症会議

2014年には、サトウキビ由来のエタノールを原料にアルコール手指消毒剤の現地製造を開始し、WHOガイドラインに基づく効果的な手指衛生の普及活動を本格化しました。

その後、2015年にはウガンダ医療関係者を日本へ招聘し3日間の感染予防管理トレーニングを実施し、翌年にはその受講者を講師としてウガンダでの2日間の感染予防管理トレーニングを開催するなど、人材育成にも取り組んできました。 

IPC training
本邦研修での医療廃棄物の分別実習
IPC training
ウガンダ研修での感染性汚物処理実習
IPC training
ウガンダ全国から集まった感染予防管理トレーニング受講者

また、2017年にはケニアに販売会社を設立し、東アフリカ2カ国においてMade in Africaの手指消毒剤とWHOの医療関連感染症対策キャンペーンの普及を推進しています。

サラヤ「病院で手の消毒100%プロジェクト」サイト

これらの早期からの取り組みが功を奏し、2018〜19年のコンゴ民主共和国におけるエボラ・アウトブレイクや、2020-21年のコロナ・パンデミックの際には、消毒剤工場を24時間稼働することで一定の貢献ができました。

SMU factory

なお、これまでの活動においては、ジュネーブ大学感染管理チームと密な協業を進めてきました。彼らは感染予防管理・手指衛生分野の先駆けとしてWHOによる手指衛生促進にも貢献してきたWHO協力施設の1つです。彼らの研究成果が中心となり、医療施設におけるアルコール手指消毒剤の標準的使用や、手指衛生の5つのタイミング等がWHOのガイドラインにも含まれるようになった経緯があります。また、同チームは、手指衛生改善を実践に移す活動の一環としてトレーナー研修「Train the trainer(TTT)」という各国で指導的な立場となれる指導者養成トレーニングを世界各地で長年取り組んできました。

現在サラヤは、アフリカ大陸では南アフリカに次ぐ2番目のTTT開催を2023年中に実現すべく、ウガンダ保健省、JICAと準備を進めています。医療関連感染症は患者をケアするなかで生じる非常に重要な合併症で、手指衛生の適切な実践により半数以上が予防可能とされています。また、抗菌薬適正使用との組み合わせで薬剤耐性菌の発生を3分の2に減らすという報告もあり、薬剤耐性問題の観点からも手指衛生を含む感染予防管理の徹底は重要な要素となります。サラヤは本プログラムをウガンダ保健省と主催することで、ウガンダの医療施設におけるグローバルスタンダードな手指衛生、ひいては感染予防管理のサステイナブルな組織形成に大きく貢献できると考えています。

Prof. Pittet

FUTURE未来

サラヤはウガンダ・ケニアにおいて、のべ約5,000名の医療従事者に対して感染予防管理の教育啓発活動を実施してきました。コロナパンデミックを経て手指衛生の認知は広まりましたが、10万人を超える医療従事者に安定的に適切な情報を伝えるのは容易な事ではありません。そこで、今回準備中のTTTを機に、自律的な組織対応を進めるための貢献を目指しています。また、手指衛生だけでなく、器具の衛生、環境の衛生といった、包括的な対応をビジネスとして進めるため、各種消耗品提供についても拡充を進めています。

MESSAGE担当者の声

消毒用アルコールをはじめとする衛生薬剤については、必需品とみなされる一方で、適切なタイミングで正しく使用しなければ、必要な効果が得られないという特徴があり、それが医療関連感染症が容易になくならない原因でもあります。また、国際輸送上、危険品としての取り扱いが必要な薬剤も多く、コスト的にも単純な貿易で対応しにくいという側面もあります。

そのため、現地生産と教育啓発を組み合わせた取り組みが必須となりますが、特に市場規模が小さな途上国においてはビジネスとしてのハードルが高くなり、同様の取り組みを行っている他の事業者は殆どありません。一方で、医療関連感染のリスクは途上国の方が先進国よりも高く、通常のビジネス環境が整うのを待つ間にも、多くの命が失われ続けているのが現実です。そのため、我々が早くから積極的に活動することで、衛生ビジネスの立ち上がりを前倒しし、医療関連感染対策を進めることで亡くさずに済む命を救いたいというのがモチベーションとなっています。

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