富士フイルムグループでは、開発途上国を中心に世界的な社会課題となっている結核終息に向けた取り組みを行っています。
結核は、世界三大感染症の1つであり、感染力の強さと、診断・治療にかかる医療費の大きさなどから、社会・経済への影響度が極めて高い疾病です。全世界で年間1,000万人強が新規に感染し、このうち約150万人が死亡しているとされています。特にアジアやアフリカなどにおける開発途上国の結核罹患者は世界全体の約9割を占めます。
しかし、開発途上国では、医療機関が不足していることに加え、交通インフラなどが十分に整備されていない場合が多く、特に都市部以外に暮らす人たちは検査や治療へのアクセスが制限されています。医療現場では検査機材が不足しており、診断技術や知見も不十分な場合もあり、仮に検査を受けられたとしても、正しい診断がなされず、病気が見逃され適切な治療につながらないケースもあります。また、結核は「早期の発見・治療で治癒が可能な病気」ですが、必ずしもそうした認識が広まっていないことも課題の1つです。
富士フイルムは、小型・軽量で持ち運びがしやすく、操作も簡単な「携帯型X線撮影装置」を製品化しています。本装置を活用することで、開発途上国の、特に山間部や離島などの僻地に住む人々に結核検診の機会を届けられると考え、世界的な結核対策を行っているStop TB Partnershipを通じて本装置を活用した結核検診の実証実験を実施しました。その有効性が認められ、2021年にはWHOが結核検診ガイドラインを改訂し、従来の痰検査に加えて、新たに胸部のX線撮影によるスクリーニング検査が推奨されることになりました。さらにWHOは、専門医が少なく人的リソースが足りない国では、胸部X線画像にAI技術を用いてその場で結核感染疑い者を見つけることを推奨しています。
富士フイルムは、WHOをはじめとした公的機関、民間の支援団体などと連携しながら、携帯型X線撮影装置を用いた結核検診の拡大をサポートしています。年間の新規罹患者が全世界のおよそ4分の1を占めるなど結核対策が大きな課題となっているインドでは、携帯型X線撮影装置を搭載した車両で医療へのアクセスが困難な地域を中心に巡回して結核検診を実施。AI技術を用いて開発された診断支援ソフトウェアも活用して、結核罹患者の早期発見に貢献しています。
WHOが掲げる「2030年までに結核を終息させる」という目標を達成するために、富士フイルムは携帯型X線撮影装置を用いた結核検診ソリューションを世界中に展開します。
また、携帯型X線撮影装置は、結核検診だけでなく、腹部領域や全身の骨など一次診療に必要なさまざまな部位の撮影にも活用できます。本装置が世界中に点在するプライマリーヘルスセンター(一次医療機関)に配備されれば、その場で簡易診療や経過観察などができるようになります。このように、一次医療機関の機能を強化することで、本当に必要な患者だけを大病院で診る、という効率的な医療体制の確立にもつながると期待できます。富士フイルムは、携帯型X線撮影装置の提供により、開発途上国の医療の質とアクセス向上に貢献していきます。
富士フイルムグループは、事業活動を通じて社会に新たな価値をもたらし、社会課題の解決に貢献することを目指しています。開発途上国を中心に世界的な社会課題となっている結核対策は、私たちが取り組むべき課題の一つです。私たちは結核終息に向け、グループの総力を挙げて、携帯型X線撮影装置の提供を通じた開発途上国における結核検診の支援活動を拡大していきます。
プロジェクトメンバー一同